第62回 活動報告
【活動報告】第62回 あおぞらの輪
最近,忙しさを理由になかなか本をじっくり読めていないのが何とも不甲斐ない。慌てるように,まさに情報だけを掬い,1回読んだものは読み返せていないのが正直なところである。(主催者なのに情けない汗。でも隠していても仕方ない)参加者さんたちの本の紹介を聴けるのは,そういう意味で本当に有難い。今回は,お2人の方の紹介を聞き,「読書を楽しむ」という気持ちを久しぶりに取り戻すことができた。感謝しかない。
◉芥川竜之介「蜜柑」(電子書籍)
Kさんは最近参加された「読書アパート3号室」という読書会で芥川龍之介の「藪の中」を読み合い,その流れで芥川の作品を漁っていた時に出会ったのだとか。10ページもしない短編作品であったにも関わらず,その内容が心に残ったのだとか。やはり,1つの作品をみんなで読み合うと,その作品を深く味わうことができる。きっと読書会に参加されたKさんにとって,芥川の作品たちが少し特別になったのではないかと思う。
主人公「私」は人生に退屈していた。そんな中,電車の中で1人の田舎者の小娘を目にする。その顔を見ると汚らしい風貌で何故か嫌悪感が湧き,小娘のひとつひとつの挙動にいちいち苛立ってしまう。そんな彼女が電車の硝子戸を開けようとする。主人公はその理由がどうしても飲み込めない。結末は果たして。タイトル「蜜柑」の理由は。
「そう言えば私も,自分の抱えているもやもやを相手にぶつけてしまうことあるよなぁ」とゆったりとした口調でご自身のことを振り返っていらっしゃる。いわゆる「投影」というものであろうか。
◉三森みき「母のお酒を辞めさせたい」(KADOKAWA・コミックエッセイ)
↑のKさんが同じく持ってきて下さったのは,「依存症」に関するコミックエッセイ。ご自身の昔の家族のことと重ねながら,フランクな表紙が印象的な本の紹介をして下さった。どうやら漫画調で著者の経験されてきた「依存症」のケースをまとめたものらしい。
「お酒を飲んでいないお母さんは優しい。だけど,お酒を飲んでいるお母さんと一緒にいると,いつも苦しくなる」 アルコールやギャンブル,覚醒剤やゲームなど,「依存症」は本人だけでなく周りの人たちも苦しい。そして,渦中にいるとなかなか外部を頼ることが難しい。本人の意思だけではなかなか回復できない依存症の困難や周囲の家族の絶望,そして回復への道のりを優しいタッチで丁寧にまとめられている。(HP:コミック劇場より一部抜粋)
Kさんはこの本を読んで,「依存症」のことを理解したとき,少し「楽」になったらしい。現在渦中にいる人だけではなく,過去に「依存症」によって悩んできた人(周囲にいた人も含めて)にとっても一読していただきたいエッセイであるようだ。
◉ 稲垣栄洋「古池に飛び込んだのは何カエル? 短歌と俳句に暮らす生き物の不思議」(辰巳出版)
最近,「あおぞらの輪」に足繁く通って下さっているPさん。お父さんの本好きが高じて,2階の床が本の重さで抜けてしまったくらいには,幼少期から本との関係が深い。
批評に関する本をお持ちの方がいらっしゃるが,この本は有名な短歌や俳句を「生物学」的な視点から眺めたもの。
著者は「生き物の死にざま」などを書かれた植物学者の稲垣先生である。例えば,松尾芭蕉で有名な一句【古池や蛙飛び込む水の音】では,「このカエルとは何カエルなのか?」をテーマしています。(そんなこと考えたこともない笑)カエルの定番といえば“カジカガエル”なのですが,ここでは裏庭にいる“ツチガエル”ではないかと著者が主張します。このように,生物学的な視点から短歌や俳句を読み直すのです。
さらに面白いのは,そのように生物が具体的にわかることによって,その作品の情景がより「カラフル」になる,とPさんは紹介されます。一読では読み取れなかった深い読みも生まれてくるかもしれませんね。
最後,お互いに持ってきた本を交換し合った。本をどこまで保有するのか,いつ手放すのか。ある方は,保有するのは○冊まで,と決めてそれ以上は持たないようにしているらしい。私も,段々と自分のアパートや家を圧迫してきた。しかし,多くを人にあげる度胸もない。(勿体無くて)さて,みなさんはどうしているのだろうか。
📚あおぞらの輪📚
#対話 #思考 #関係 #場 #物語





